リオ娘3人とヘリコプターで社の屋上に帰還し、縄ばしごから別れのキスをするプレイボーイ登場。彼は男性誌の敏腕記者キャッチャー・ブロック。3人娘とは、乱れることで評判のNASAのパーティーで知り合ったらしい。仕事をサボっていたことを咎めるボスに、彼は彼女たちによって見事NASAの機密エリアのアクセスパスを得たことを、ウインクしながら明かす。この時のセリフがかっこいい。"Blame
it on the bossa nova."とウインクして言うのだ。(イーディ・ゴーメの『恋はボサノバ』の原題。更に言うなら、大滝詠一の『恋はメレンゲ』の元ネタである。)
気弱な社長が日本料理店でデートの途中で意中の女性に立ち去られ、あわてて中庭に降りておいかけようとするが靴が片付けられていて見当たらない。その時に彼が発する言葉が"Where
is my geisha?"(フランス料理店のギャルソンみたいに捉えられているのがまた60年代のエキゾチック・ジャパン映画っぽい。)
そもそも、そのプレイボーイ記者の属する雑誌が「違いを知る男の雑誌・KNOW」
それに対抗して彼女が創刊したのが「今を生きる貴女の雑誌・NOW」。素敵なセンスに溢れているのだ。また、それらのタイトルを語る時に、わざわざ「それを知っている」("I
know KNOW.")とか、「それにノーを突きつけよう」("Let's say no to KNOW.")とか「君も今やナウ誌を出版する立場だね」("Now,
you are publishing NOW.")みたいなことばっかり言わせている。
彼女と彼がデートの晩、それぞれの住まいで身だしなみを整える場面にかぶる"Fly me to the moon"。彼女の様子が映される場面では女声ボーカル版が、彼が映される場面では男性ボーカル版が流れる。そしてあの聴きなれた歌詞に耳を傾けると「私を月まで連れてって。お願い、どうか正直でいて」。彼がNASAの宇宙飛行士であると嘘をついていることまで見事に反映した選曲なのだ。
本作は「テリー・ギリアム最新作の」メイキングとなるはずだった。その映画が挫折したため、「ある映画が中止になるまでの様子」を記録したドキュメント映画として公開される。新アルバムのメイキング映画のはずが結果的に「バンドが崩壊していく様子」を捉えたドキュメント映画となった「LET IT BE」を想起させるのも、パイソンズらしいといえばらしい。とはいえ、今回の頓挫の原因は予測可能なことだらけで、同情するより危機管理の甘さに驚く(他人の不運を観て爆笑できる人がいるのも不思議だ)。彼の作品が持つ悪夢的要素が現実に流入したような1本。
(初出・REAL東京)
本作はテリー・ギリアムの最新作「ドンキ・ホーテ」のメイキング・フィルム…となるはずだった。だがその映画が挫折したため、このフィルムは今「あるプロジェクトが崩壊していく様子」を記録したドキュメント映画として公開される。このあたり、ビートルズがニューアルバムのメイキング映画を撮ろうとし、結果的に「一つのバンドが崩壊していく様子」を記録したドキュメント映画として公開された「LET IT BE」を連想させ、期待して臨んだ。ところが起こるのは予測可能なアクシデントばかり。可哀想と同情するには危機管理の甘さが目立つのだ(それでも、他人の不幸というだけで爆笑できる人が多いのは不思議だ)。
テリー・ギリアムの作品は、映画監督として有名になってからの作品にもどこか根底にモンティ・パイソンのあの悪夢的なアニメのテイストが流れている気がするが、常にその悪夢は境界を越えて彼の人生に流出する隙をうかがっているように思える。
(未発表ロングバージョン)