今作は、2人の香港での休暇中から始まる。前作が、休暇で香港へと向かう機内で終わっていたから、その続編感あふれる趣向にワクワク。 成龍(ジャッキー・チェン)が香港とアメリカの風習の違いにとまどった前作との対比で、今回はクリス・タッカーが慣れぬ香港で悪戦苦闘。 欧米のフィルターを通して描かれる香港ゆえ、29年前の「燃えよドラゴン」(龍争虎闘)の香港描写とだぶって見える。だぶるといえば、“ 香港大スターのハリウッド作品”に“音楽担当ラロ・シフリン”というキャスティングも、まんま「燃えドラ」。シフリン本人も意識してないはずがなく、 “追跡”とか“じんわり大乱闘の予感”なんてシーンでは、そこんとこ何とな〜く踏まえてくれてます。さすがに、悪のボスが主催する豪華絢爛パーティー場面は、 ハンの要塞島とは全然違うまとめ方でしたけど。その、悪のボス役がなんと、ジョン・ローン。多少の場末感こそ気になるが、なよっとした色香漂う悪を楽しんで演じてます。 章子 (チャン・ツィイー)は、欧米受けするエキゾチシズムのみで使われちゃったのがもったいない気がする。例えていうなら、日本ロケした007映画に鳴り物入りで 出演した浜美恵がただの人形みたいな役だったあの時の気分。 「グリーン・デスティニー」( 虎 龍)を観て起用したとのことで、だったらもう少し個々の人物描写を丁寧に作ったら、より深みが出た気がします。(宮永正隆)

【POP ASIA 38号 (2001年10月)】